【グランプリを受賞しました!】明治ブルガリアヨーグルト×note「#ヨーグルトのある食卓」投稿コンテスト
明治ブルガリアヨーグルトとnoteのコラボ企画、「#ヨーグルトのある食卓」投稿コンテストにて、当サイト運営者のエッセイがグランプリを受賞しました。審査結果・講評は下記リンクよりご覧いただけます。
【審査結果の発表と講評】明治ブルガリアヨーグルトとnoteがコラボした「#ヨーグルトのある食卓」投稿コンテストの審査結果を発表します!
【受賞作品】丁寧男とズボラ女のカスタマイズドヨーグルト
*noteより本文を転載します。
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丁寧男と暮らしている。彼の人生の目標は、衣食住すべてにおいて丁寧な暮らしをしつつ、週末には山に登って非日常の風景を楽しむこと。炊事も掃除も得意で効率が良く、テキパキ動くし手を抜かない。健康のために毎朝ヨーグルトとプルーン2個を欠かさず食べ、毎週末10キロ走る。
対するわたしは筋金入りのズボラ女で、家事が大の苦手。テキパキ動くのも苦手。苦手だから嫌いなのか、嫌いだから苦手なのか。どちらが先かはわからないけど、こうやって文字にするだけで暗い気分になるくらいには苦手かつ嫌いだ。
とくに料理をするときは、一気にたくさんのことが押し寄せるから頭がパンクしてしまう。鍋にフライパン、電子レンジやオーブンを同時に稼働させながら食器や調味料を出し、しまい、野菜を洗い、切り、調味料を混ぜる……。
ああもう!なにがなんだかわからない。
あれを買ってこれを買って…家にあれがあるからあれを作って…。
色々な食材を思い浮かべて毎日の献立を考えるのも好きじゃない。
だから我が家では、台所のまんなかに立つのはいつも丁寧男だ。わたしはただのアシスタントで、丁寧男の司令に従って雑用をこなす。
でも実は、この関係があてはまらない時間が毎日15分だけある。朝ドラが始まるまえの15分。朝ごはんの準備時間だ。
まずはお盆をカウンターに置いて、箸とスプーン、それからちょっと底が深い葉っぱ型のお皿を乗せる。冷凍した炊き込みご飯と作り置きの味噌汁を温めているあいだに、冷蔵庫からヨーグルトとプルーン3粒を取り出してその皿に盛りつける。お湯を沸かしてマグカップに入れ、熱すぎないように水を足す。
ゆらゆらと湯気が立ちのぼるご飯と味噌汁を器によそって配膳すれば、朝ごはん兼朝ドラ鑑賞の準備は万端だ。
そのあいだに丁寧男は朝の支度を進める。無駄のない動きで歯を磨き顔を洗い、頭を洗い、髭を剃り、スーツに着替える。わたしが食事の準備を中心的に担うのは、この時間だけだ。
朝くらい、自分のことに集中してもらおうじゃないの。わたしがちゃんと送り出してあげようじゃないの!
と得意な気分になりつつも、
たったの15分、しかも煮ても焼いてもないのになにを偉そうに!
なんて自分でツッコミを入れる。
まぶたを擦って準備を進める。
できあいのものを温めたり盛りつけたりするだけだけど、短時間にいくつもの作業をこなす。任務を終えて朝ドラの音楽が聞こえると、なんだかほっとする。達成感だってある。吸い寄せられるようにソファに座り、テレビと食卓に向かう。
テレビを見ながらふたりで食べるヨーグルトは格別においしい。ふたりで、といっても皿はひとつで、丁寧男が先にヨーグルトの7割とプルーン2個を消費する決まりだ。その分量が、丁寧男が健康のために定めたカスタマイズドヨーグルトなのである。
そこにわたしは足りないヨーグルトを加え、さらに丁寧男が登山土産に買ってきた甘い甘い手作りりんごジャムを投入する。
こうして出来上がったズボラ女専用のヨーグルトは、せわしない朝の香りとさわやかな山の香り、丁寧男のシャキッとしたスーツの香りがして、少ししょっぱい味噌汁の味やら朝ドラ鑑賞中に流した涙の味やら、いろんな味がまざっている。まっしろでなめらかなヨーグルトは、なんだって受け入れてしまう朝のキャンバスなのだ。
夫婦のカタチも人生も、好きなようにアレンジしていいんだよ。大事なものをちゃんと大事にしていれば。
都合の良い解釈しかできないわたしはヨーグルトがそう言ってくれているような気がして、ジャムと混ざり合う清らかで素朴な重みをありがたく噛みしめる。
わたしがヨーグルトを食べているあいだに朝ドラは終わりを迎え、同時に丁寧男はそそくさと立ち上がる。朝の支度の最終段階に突入だ。
のんびりとヨーグルトを食べ続けるズボラ女を見つけると、丁寧男は早く仕事にかかれと叱咤激励する。そう、在宅で仕事をしているわたしは余裕をかましているのだ。
叱咤激励されたって急かされたって、朝のヨーグルトはゆっくりと味わいたい。だってわたしたちの暮らしの香りがするから。ここにしかない朝の味だから。
あと少しでヨーグルトがなくなるというタイミングで、「行ってくるね」と声がした。ちょっと寂しい気がして、走って玄関に向かう。よくわからないけど丁寧男は笑っている。
見送ったあと鏡を見ると、口元にはまっしろなヨーグルトがついていた。
【完】
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